「あ~あ。旦那ぁ、顔ぶっちゃあいけねぇな」

怒鳴り散らす小太りの男と、のんびりと言う人買いに、与一は小さいながらも、状況を何となく理解した。

「おみっちゃん。おいらのことは、いいから」

頬を押さえて蹲るお三津に寄り添い、与一は感情のない声で言った。

「よ、与一ちゃん・・・・・・。だって・・・・・・」

涙を溜めた目で与一を見つめるお三津に一つ頷くと、与一は小さく骨張った手で、お三津の手を取った。
助け起こすほどの力もないが、お三津は与一の小さな手を握りしめて、立ち上がりながらぽろぽろと涙をこぼした。

「さぁ、さっさと行くぜ」

乱暴にお三津の腕を引っ張る小太りの男に引き立てられながら、お三津が去っていく。

何度も振り返りながらも、次第に小さくなっていくお三津を見送っていた与一は、ふと近づいてくる奇妙な歌に気づいた。