「確か、どっかの娘さんをもらってたはず。そうそう、うんと若いはずよ」

ぽんと手を叩いて言った後、二人は顔を見合わせて黙り込んだ。

「あそこの店は、家でもあるんですよね」

「そうね。市の店は、みんな家をそのまま店にしてるはずだし」

「じゃ、奥方もあそこにいるってことですよね」

「どうかした?」

与一は腕組みをし、考え込んだ。

店は二階建てだ。
奥方は二階に籠もっているのだろうか。
店にまったく顔を出さないというのも、解せないが。

「主人はどうも、店の奥の部屋で、客と逢い引きしているようでしたが」

「にゃんですって?」

驚きのあまり、妙な言葉遣いになる藍に、与一は店の奥から出てきた主人と男のことを話した。