やがて日が落ちる頃、二人は京処の入り口付近にある、小高い丘の上にいた。

「店の外観は、特に特徴のない普通の造りね。東側に、小さい庭があるみたいだった。築地塀で囲まれてたけど、裏口の傍に、手頃な松の木があったから、ま、あそこから入るのも可能だわね。庭の内部がどうなっているのか、店の内部も調べないと」

「奥は居住地ですね。私的な出入りは、裏からしているようでした。おそらく、藍さんの言う庭を抜けて、裏口から出入りしているのでしょう。ああ、そういえば」

与一は一旦言葉を切り、店の主人の顔を思い出した。

「あそこの主人、随分そっちに、はまってるようですね」

「え、主人が、はまってるの? 辰巳に?」

藍が、嫌悪感をむき出しに、顔をしかめる。

「いや、そっち全般に。あそこの主人は、独り者なんですか?」

ふるふると首を振り、藍は眉間の皺を深くして、こめかみを押さえた。