与一は眉間に皺を刻んで、前を向いた。

三郎太も、そんなことを言っていた。
魅力的というなら、藍のほうがよっぽどではないのか。
藍こそ、素顔を晒せば、人の目を惹きつけずにはおれないはずだ。

「･･････意味がわかりませんね」

ぽつりと言い、与一は立ち上がった。
藍が慌てて最後の稲荷を口に放り込み、与一の後を追う。

そのまま与一は元のように、路地や通りを行き来し、たまに店に入りつつ、下駄屋の裏手に出た。

ざっと辺りを見渡し、下駄屋の横の路地に滑り込む。
素早く店の造りを、外観から調べていく。

西側を調べ、裏から表へ。
そこで東側を調べた藍と落ち合い、また少し離れて歩き出す。