「あんたが、辰巳さんかい」

与一が足を作業台に乗せながら確認すると、辰巳は与一を見、再び口角を上げた。

「おや。ご存じで」

「小物街の辰巳といやぁ、結構な腕で有名らしい。俺も人に聞いて、来てみたのさ」

与一は客を装い、店の中を観察した。

職人は他に、店の奥のほうに一人。
その他には、下働きの奉公人が三人ほど。
店の主人らしき者は、見あたらない。

と、いきなり生暖かい感触が足首を包んだ。

見ると、辰巳の手が、与一の足を両手で包み込むように、さすっている。

「お客さん、良い足してるね。引き締まってるし」

辰巳に包まれている右足から、物凄い勢いで粟肌が駆け上がる。
足を引っ込めたい衝動を必死に堪え、与一は引き攣る顔で口を開いた。