「さて。よいっちゃんが仕入れた情報を元に、あたしが見たところ、あいつは客にも色目を使ってるわね」

言いながら、下駄屋のほうへ歩き出す。

「ということで。悔しいけどあたしより、よいっちゃんのほうが、辰巳に近づきやすいってことよ」

嫌な予感が、与一の胸に広がる。

「お嬢さん。俺にその気(け)は、ありませんよ」

とりあえず抵抗を試みる与一に、藍は少し考えて、彼のほうへ駆け寄った。

「ねぇ。そういうことになるなら、あたしと辰巳、よいっちゃんはどっちがいい?」

「お嬢さん」

与一の手を握って見上げる藍に、彼は即答した。

当たり前だ。
女のほうがいいに、決まっている。