「えへ。よいっちゃんが見張ってくれてると思うと、安心して寝過ごしちゃったの」

ぺろりと舌を出し、とびきり可愛く笑う藍に、たまたま通りがかった男が釘付けになる。

魅力的で目を惹くってのは、こういうのを言うんじゃないかなぁと思い、与一は藍を見つめた。

「辰巳は寺の稚児だったって?」

「・・・・・・どこから聞いてたんですか」

美味そうに稲荷寿司を頬張る藍に言いながら、与一も寿司を口に放り込む。

「うふふ。ちょっと聞けば、それぐらい、わかっちゃうのよぉ」

本当に、藍はわからない。
神出鬼没、地獄耳。

ふぅ、と息をつき、与一は先程三郎太から得た情報を、藍に話した。

「そうかぁ~。だからあいつ、あたしが下駄屋に行っても、見向きもしなかったのね」