相変わらず恥ずかしそうに、やたらとあべかわ餅を頬張る三郎太に、与一は首を傾げた。

さっぱりわからない。

別に通りを歩いていて、やたら熱っぽい視線を感じることなどないし、張り見世や夜道で袖を引かれるのは、引くほうは仕事なのだから、珍しいことではない。
お三津やお松が優しかったのは、ただ単に、与一が一番小さかったからだろう。

「おっと。そろそろ店に戻らにゃ。お前もあそこの下駄屋で下駄ぁ買うことがあったら、辰巳には気をつけろよ。きっと狙われるぜ」

笑いながら与一の肩を叩き、風呂敷包みを大事そうに抱えて去っていく三郎太をぼんやり見送っていた与一の背後から、いきなり知った声が聞こえた。