当時は何が何だかわからなかったが、女子(おなご)たちが連れて行かれたのは、遊里だった。

そこで女子(おなご)全員を手放した人買いは、最後に残った与一を眺めて、ため息をついた。

「やれやれ。お前は、どうするかね。もちっと大ききゃ、他の野郎と同じように、奉公へやれるんだが」

「寺へやったらどうだえ。お山の寺なら、若い男子(おのこ)は大歓迎じゃろ」

一人の女子(おなご)を引き取って、店に戻ろうとしていた小太りの男が、振り返って声をかける。

「そうさな。それしかねぇな。汚れを落としゃ、こいつはそれなりだし」

言いながら、与一の細い腕を引っ張り、立ち去ろうとする人買いに、不意に先程の小太りの男に買われた女子(おなご)が駆け寄った。