三郎太は、そんな与一の心中を読んだように首を振ると、先のように声を潜めた。

「辰巳は、寺の稚児だったらしいぜ。寺から逃げ出して、職人になったって」

「・・・・・・寺に一度でも入った奴は、皆そうなるものなのか?」

再び藍に拾われなかったら、という考えがよぎり、与一は顔をしかめて下駄屋を眺めた。

「人によるだろうなぁ。でもま、どうせそういう目に遭うなら、はまってしまったほうが、楽かもしれないぜ。色事には変わりないからな。幼い頃から仕込まれりゃ、どっぷり浸かるんじゃね?」

「三郎太、詳しいな」

目を下駄屋の店先で作業する辰巳に据えながら、与一は隣であべかわ餅を頬張る三郎太に言った。