一応、与一の話に嘘はない。

お三津が最後まで残っていたのは、本当に置屋の旦那衆が取り合って、揉めたからだ。

女郎に必要なことは、まず器量。
後のモノは、買い取ってから仕込めばいい。
お三津は、なかなかの器量好しだった。

「そ、そうか・・・・・・」

三郎太は、項垂れた。
その姿に、与一は奇妙な感覚を覚える。

昔々に想っていた相手が女郎になったということが、そんなに辛いことなのだろうか。
しかもお三津を想っていたのは、十やそこらの頃の気持ちではないか。

与一もお三津を思い出すことはあるが、どうしているかと、ふと思うだけで、女郎になったこと自体は、特に何とも思わない。
それ以前に、殺し屋の情報収集能力を持ってすれば、案外簡単に居場所がわかるかもしれない。

それをしないのは、特にお三津を何とも思ってないから・・・・・・。

『よいっちゃんは、お姉さんが殴られてても、何とも思ってないような感じだったわ』

藍の言葉が蘇る。
与一は膝に顔を埋めるように、身体を折り曲げた。