「色町? え、お前、女郎屋に引き取られたのか?」

「いや、その人は、色町とは関係ないよ。最後に残った俺は、寺にやられそうになったんだが、たまたまそこに居合わせた人が、引き取ってくれたのさ」

「へぇ。運が良かったな。寺なんぞにやられてたら、えらい目に遭ってたろうしな」

にやにやしつつ、三郎太は与一の腰を小突いた。

「しかし、女子(おなご)は色町か。わかってたこととはいえ、ちょっとなあ・・・・・・」

三郎太は、茶を飲み干すと、ふぅ、と息をついた。

「奉公先も、それなりに辛かったけど、あのときほど男で良かったと思ったことはなかったな。あ、お前のように小さかったら、女子と同じような目に遭ってたわけだから、一概にはそうもいえないわけだが。あの頃はまだ、色事の何たるかを、よくわかってなかったからな」