「・・・・・・三郎太?」

「おお!」

ぱっと明るく笑って、男---三郎太は、与一の肩を叩いた。

「でかくなったなぁ! 元気だったか?」

「三郎太こそ、立派になったな」

笑い合い、三郎太は、与一の隣に腰を下ろした。
折良く先程与一が呼んだ茶屋の坊主がやってきたので、茶とあべかわ餅を頼む。

「三郎太は、確か京処の大店(おおだな)に、奉公に入ってたんだったな」

与一は言いながら、三郎太の下げている風呂敷包みに、さりげなく目をやった。

「ああ。千秋屋っつう、駕籠屋だよ。きっつかったぜ、ガキの頃はよ」

なるほど、風呂敷包みには、確かに‘千’の字が染め抜かれている。

千秋屋といえば、屋根や提灯は‘千’の文字、屋形や内部には、秋にちなんだ紅葉柄を用い、見た目が綺麗なので女性を中心に人気の、京処の駕籠屋だ。