藍の瞳は苦手だ。
あの大きな冥い瞳に見つめられると、吸い込まれるような恐怖を感じる。
藍の気に、喰われるのだ。

おそらくそれは、与一だけではない。
誰しも藍に見つめられると、動けなくなる。

美しい顔立ちに目を奪われるのはもちろんだが、一旦漆黒の瞳に捕らえられると、足に根が生えたように、その場から動けなくなるのだ。

「驚かしてなんかないもん。よいっちゃんの、可愛い寝顔を見てただけだもん」

言いながら、藍は朝餉の膳を用意した。
布団を畳もうとした与一は、ふと手を止めて、藍を振り返った。

「藍さん、寝るんですよね」

「うん。ご飯食べたらね。よいっちゃんは、また辰巳のとこに行っておいて」

「了解・・・・・・」

布団の乱れを直し、与一は膳の前に座った。