「さぁ、とっとと帰るわよ」

言うが早いか、藍は獣並みの速さで駆けだした。
今度は与一が慌てて藍を追う。

藍のこの速さは、尋常ではない。
大の男の与一でさえ、ついていくのがやっとだ。
それも、幼い頃より藍に仕込まれたからであって、普通の人間なら、まずついてはこれないだろう。

藍はいつも、住処に帰るときは、この速さで帰る。
住処を知られないためだ。

ふと気づいて、与一は走りながら、早口で藍に問うた。

「藍さん。もしかして、藍さんを負ぶった状態で、この速さで走らす気だったんですか?」

少し喋っただけでも息が乱れ、遅れそうになる与一の手を掴み、速度を落とすことなく藍は、にこっと笑った。

「何事も、鍛錬鍛錬」