「だから無理しないで、どっかで仮眠でも取れば良かったんですよ」

「だって、よいっちゃんが負ぶってくれると思ってたんだもん」

頬を膨らませ、潤んだ目で上目遣いに見上げる藍は、どう見ても年端もいかない美少女だ。

「俺にじゃなく、その態度をこそ、辰巳に見せたらどうです。簡単に事が進みそうですがね」

無表情に言い、足早に先を急ぐ与一を、藍が慌てて追いかける。

「やーよぅ。よいっちゃん以外の男なんかに、負ぶわれたくないわ」

与一を追い越し、つんと上を向いて、ずんずん歩く。

どこが眠くて歩けない、だ。

もっとも端からそんなこと、信じてはいないが。
藍がそこまで隙だらけになることなど、ありはしない。