「・・・・・・言われてみれば、願いなど、ありませんね」

闇のような瞳を見つめたまま、与一は言った。
その途端、藍はにこっと笑って、与一の腰にしがみつく。

「よかったぁ。ほんとにあの人は、何でもないのね」

全く本当に、どこまでが本気なんだか。

与一は息をつき、藍を引き剥がした。
そして、珍しく与一のほうから藍の顔を覗き込んで、言ってみる。

「嫉妬ですか?」

「そうよ」

あっさりと認めた藍に、少なからず驚いてしまう。

「あたしの育てた可愛いよいっちゃんが、他の人のものになるなんて、我慢できないわ」

ふんぞり返って偉そうに言う藍に、与一はがっくりと項垂れた。