「ところで藍さん。御珠って、何です?」

しばらくしてから、目は下駄屋に据えたまま、与一が藍に問うた。
退屈していたのか、伸びをしながら、藍は少し首を傾げた。

「さぁ? 願いを聞くってあったから、願いを叶える・・・・・・珠かしらね」

「願いを叶える珠ぁ?」

眉間に皺を刻んで、与一が藍を見た。

「本気で言ってるんですか? そんなもの、あるわけないじゃないですか」

馬鹿にしたように言う与一に、藍も頷く。
だが藍は、頭っから信じていない風ではないように、落ち着いて言った。

「そう思うけど、でも実際それを手に入れようと狙う輩がいて、命を落としている。辰巳も、命がけで守ってるわけでしょ。願いの叶う宝なら、命をかける価値も、あるんじゃないかしら?」