すっかり藍に骨抜きにされた男が、気前よく監視の場を提供してくれた。
この店の二階からは、元いた通りの、例の職人がいた店が、よく見えるはずなのだ。

「いいのぉ? ありがとう~」

にっこりと微笑む藍に、男が嬉々として階段を上がっていく。

「見事なもんですね」

後ろから、ぼそっと言う与一に、藍は男に向けたのと同じ笑みを向ける。

「その笑みに抗える男は、いないですからね」

「あら、じゃあよいっちゃんは何なの?」

表情一つ変えずに言う与一に、藍が言う。

「俺は別に、笑いかけられなくても、親である藍さんに反抗しようなんて、思いませんから」

「・・・・・・可愛いのか可愛くないのか、わからないわね」