「ああ、はいはい。えっと・・・・・・」

無理矢理空席を探す男に、藍は、さらに可愛く二階を指差して笑った。

「お二階がいいな。往来が、よく見えるでしょ?」

「そ、それはもう。うちは、ここいらじゃ見晴らしの良い店ってんで、評判なんでさ。窓際など、向こうの通りまで見渡せて、それは楽しゅうございますよ」

絶世の美少女に微笑まれ、男はいそいそと二階へ案内する。

「わー、じゃあ是非とも窓際がいいなぁ。でもそんなに人気じゃ、きっと空いてないわね」

しょんぼりと言う藍に、男は勢い良く顔の前で、手を左右に振った。

「大丈夫です。実は、客間として使ってない部屋があるんでさ。祭りのときとか、不意に見えられた大事なお客のときは、開放するんですがね。お嬢さんのためだ、特別に、お通しします」