「何って･･････。大体、藍さんはどうなんです。藍さんこそ、実際に小さいころからの俺を世話してきたんだから、家族としか思えないんじゃないですか？」

だからこそ、平気で自分の前で裸になれるのではないか。
そう思うと、何故か不愉快になる。

「俺のこと、子供と思ってるから、平気で布団に入ってきたり、裸になったりできるのでしょう？」

不愉快な気持ちのまま、半ばやけになって、与一は突き放すように言った。

「子供だなんて、思ってないわよぅ･･････。あたしだって、さすがによいっちゃんの目の前で、裸になんてなれないわ。さっきはそうでもしないと、よいっちゃんが死んじゃいそうだったからよ。考える前に、行動してたんだから」

そういえば、どうやって帰ってきたのだろう。
下駄屋で竜胆丸を殺してからの記憶は切れ切れで、はっきりとはわからないが、確か風弥に担がれてどこかに移動した。
移動したのがどこかはわからないが、この家でないことは確かだ。
住処を知られるわけにはいかないので、風弥が運んだわけでもあるまい。

こういう稼業だから、足手まといになったら、打ち棄てられてもおかしくないのに。

「死にそうな者を、よく助けましたね。俺は下駄屋ですでに意識は怪しかったんだから、放っとかれても文句は言いませんし、そのまま死んでも、恨みませんよ」

「あたしがよいっちゃんを、見捨てるわけないでしょっ！」

いきなり甲高い声で怒鳴られ、与一は驚いた。
仕事中に動けなくなったら、その時点で命はないものと思え、とは、昔から藍に教わってきたことである。