「何ですって。藍さんが母親なんて、無理があるにも程がありますよ。そのうち、俺が父親に見えるようになりますよ」

「でも、あたしがよいっちゃんを育てたのは事実よ」

何故か少し拗ねたように言う藍に、与一は少し考える。

確かに育ててくれたのは藍だが、特別に可愛がられて育ったわけでもないし、むしろ昔は、それこそあらゆる殺人術の特訓に、甘えるどころではなかった。
藍を母親と思ったことはない。

「藍さんは、藍さんですよ。育ててもらいましたが、昔から母親とも思えない幼さだったじゃないですか」

どういう意味よ、と、藍が軽く睨む。

「いいとこ、姉でしょう。今はまるで、妹ですが。でも、そうでもないな、と、思い知ってしまったような気はしますね」

そこまで言うと、はぐらかす意味も込めて、与一はごろりと横になると、ごそごそと布団に潜り込んだ。

「そうでもないって、どういう意味? いい意味なの? 悪い意味なの?」

「・・・・・・藍さん。俺、裸なんですから。暖めてくれたのは感謝しますけど、俺だって男なんですから、震えが止まったら、俺が起きないうちに、さっさと抜け出さないと」

食い下がる藍に、与一は布団の中から答えた。
藍はきょとんと、小首を傾げている。