だが、与一が骨抜きになることはない。
彼は、目の前の天女の正体を、知っているからだ。

「わかりましたから、せめてその足のモン、外しませんかね」

与一は己の太股に当たる、藍の太股の、ある一部を意識しながら言った。

柔らかい藍の肌にはあり得ない、冷たく、硬い感触。
藍の本性を具現化したような、コルトSAA。
‘ピースメーカー’という通称をもつ、回転式拳銃だ。

「これは、あたしの恋人よぅ。あ、よいっちゃんたら、妬いてるのぉ?」

「そんなもの、つけたままくっつかないでください。恐ろしい」

冷ややかに言う与一に、藍は、ぷぅ、と膨れた。

「よいっちゃんは、危機管理がなってないわぁ。寝てるときこそ、気をつけないといけないのに」

ぶつぶつ言いながらも、手早く小袖の裾を割り、太股に取り付けたSAAを、ホルスターごと取った。