「・・・・・・とりあえず、脇腹と首の傷以外は、かすり傷程度ね」

呟き、二階と台所を走り回り、水を張ったたらいと白い布を用意した藍は、与一の横に座り込むと、せっせと身体の血を拭い始めた。

身体の血を拭いてしまうと、大方の傷は、すでに傷口が閉じていた。
脇腹と首の、大きな傷の手当てをすると、再び藍は二階に走り、うんせ、うんせと布団一式を一階に運び、与一の横に広げると、えいっと与一を転がした。

「ああ~~。疲れたぁ~~」

ぺたりとその場にへたり込み、藍はようやく自分の帯に手をかけた。

今着ている振り袖は、お蓉が着せたため、帯を解くのは、そう難しくはない。
ぽいぽいと着ていた着物を脱ぎ捨てると、小袖をはだけ、自分の脇腹を確かめる。

風弥に打たれた脇腹が、蒼い痣になっていた。
その上に手を当て、慎重に調べていく。

「ん~・・・・・・。・・・・・・痛っ」

手が、ある一点を押した瞬間、藍は顔をしかめた。
痣のちょうど中央辺りを押したときに、鈍い痛みが走ったのだ。
が、骨が折れているほどの酷い痛みではないし、腫れているわけでもない。

「何だかんだ言って、あいつ、手加減したのかしら」

独りごちて、藍は己の膝頭にある、与一の寝顔に目を落とした。