「・・・・・・お嬢さんには、重そうですね」

しれっと言う与一に、藍がぶぅ、と膨れる。
与一は外では、‘藍さん’とは呼ばない。

「兄さん、照れない照れない。こんなに可愛いお嬢さん相手には、それぐらいしか言えないでしょうけど」

「そうよぅ。素直に、わー綺麗。よく似合ってるよって、お言いなさい」

つんとすまして言う藍に無言で近づき、与一は簪の藤に触れた。
藤の飾りは、小さな花がついた繊細な紐が、何本か集まっている造りだ。

「似合ってないとは、言ってません。旦那、これの飾りを、少し減らすことは可能か?」

「へ? へえ・・・・・・。そりゃ、できますけど、豪華さが半減しちまいますぜ」

店の亭主が、怪訝な顔をする。

若い娘の飾りは、華やかさがあればあるほど、人気のあるものだ。
飾りを多く、というのならまだしも、減らすなど、聞いたことはない。