「お前さんにも、多少の責任はあるってことかな。稚児の経験があるってのも、噂に拍車をかけるわな。お前は、その経験があるのに、染まりもしないで、よくあそこで耐えられたもんだな」
辰巳と風弥の会話に、藍はぞぞ、と粟肌立った腕をさすった。
あんまり詳しくは、知りたくない世界だ。
「一応旦那の前じゃ、その気を匂わすために、他の奴や客にもちょいとちょっかい出したりしなきゃいけなかったから、苦痛だったけど・・・・・・。稚児だったお陰で、上手いかわしかたも覚えた。実際俺は、下駄屋に来てからは、やられてないぜ。焦らすふりをして、かわしてきた」
「ほぉ。そりゃあ随分、旦那も気の長い奴だったんだな。お前さんが下駄屋に来たのなんざ、ここ最近のことじゃないだろう」
風弥の言うとおり、あの衆道狂いの旦那が、年単位で焦らされたまま我慢できるとも思えない。
しかもその間、気持ちは離れることなく、旦那の寵愛は辰巳にあったのだ。
「それこそが、比和の力よ。長年に渡って陽の気を蓄えた身体は、一度掴んだ者の気持ちなど、そう簡単には離さぬ。だからこそ、単なる客も増えるわけじゃ。もちろん、それなりの腕があってのことじゃろうがな。そういえばお前さんは、寺からも追われているのか。元の寺か?」
初めに辰巳が、この騒ぎを寺からの追っ手と思ったことを思い出したたまが、心配そうに言った。
辰巳は少し考えて、首を傾げた。
「さぁ。寺から逃げ出してから、しばらくは何もなかったんだが、少し前からかな。初めは話を聞いてから断ってたんだが、何でか力ずくで寺に戻そうとする輩(やから)が増えた」
辰巳と風弥の会話に、藍はぞぞ、と粟肌立った腕をさすった。
あんまり詳しくは、知りたくない世界だ。
「一応旦那の前じゃ、その気を匂わすために、他の奴や客にもちょいとちょっかい出したりしなきゃいけなかったから、苦痛だったけど・・・・・・。稚児だったお陰で、上手いかわしかたも覚えた。実際俺は、下駄屋に来てからは、やられてないぜ。焦らすふりをして、かわしてきた」
「ほぉ。そりゃあ随分、旦那も気の長い奴だったんだな。お前さんが下駄屋に来たのなんざ、ここ最近のことじゃないだろう」
風弥の言うとおり、あの衆道狂いの旦那が、年単位で焦らされたまま我慢できるとも思えない。
しかもその間、気持ちは離れることなく、旦那の寵愛は辰巳にあったのだ。
「それこそが、比和の力よ。長年に渡って陽の気を蓄えた身体は、一度掴んだ者の気持ちなど、そう簡単には離さぬ。だからこそ、単なる客も増えるわけじゃ。もちろん、それなりの腕があってのことじゃろうがな。そういえばお前さんは、寺からも追われているのか。元の寺か?」
初めに辰巳が、この騒ぎを寺からの追っ手と思ったことを思い出したたまが、心配そうに言った。
辰巳は少し考えて、首を傾げた。
「さぁ。寺から逃げ出してから、しばらくは何もなかったんだが、少し前からかな。初めは話を聞いてから断ってたんだが、何でか力ずくで寺に戻そうとする輩(やから)が増えた」


