「ああっ。御珠が単なる珠だったら、宮様のお部屋にでも忍んでいって、頼まれた珠だけを置いてくればよかったのに。よりによって、生き物だなんて。これじゃ、嫌でも説明はしないと、納得してもらえないわっ」
むきーっ! と、藍は頭を掻きむしる。
依頼人に姿を曝すことは、厳禁だ。
それに、たまを連れて行って説明したところで、お福がしょっ引かれたと知れば、もっとややこしいことを頼まれそうな気がする。
たとえば、お福を救い出してくれ、など。
「仕方ない。一応お前さんも、わらわを東の者から守ってくれたわけだし。何とかしてやろうかの」
頭を抱えて悩む藍に、たまがゆっくりと頭を起こして言った。
「とにかく、お福の境遇を、何とかしてやろうということじゃな? 下駄屋の旦那に嫁がせたのはともかく、そもそも斎王が既婚でもよくなったのは、由緒正しい斎王の血を残すためじゃ。それが衆道者相手では、その責務も果たせぬ。・・・・・・お福は、北御所に引き取るかの」
「離縁さすってこと?」
藍の言葉に、たまは頷いた。
「お福は、旦那を好いているわけでは、ないのじゃろう? 大体、北御所に連なる斎王の家に、衆道者が関わること自体が気に入らぬ。汚らわしい」
シャッシャッと毛を逆立てるたまは、心底嫌そうに牙を剥く。
狐や化け猫は、女系だ。
故に、必要以上に衆道者を毛嫌いしてしまうのだろう。
そのわりに、たまのいるのは、相変わらず辰巳の膝の上なのだが。
むきーっ! と、藍は頭を掻きむしる。
依頼人に姿を曝すことは、厳禁だ。
それに、たまを連れて行って説明したところで、お福がしょっ引かれたと知れば、もっとややこしいことを頼まれそうな気がする。
たとえば、お福を救い出してくれ、など。
「仕方ない。一応お前さんも、わらわを東の者から守ってくれたわけだし。何とかしてやろうかの」
頭を抱えて悩む藍に、たまがゆっくりと頭を起こして言った。
「とにかく、お福の境遇を、何とかしてやろうということじゃな? 下駄屋の旦那に嫁がせたのはともかく、そもそも斎王が既婚でもよくなったのは、由緒正しい斎王の血を残すためじゃ。それが衆道者相手では、その責務も果たせぬ。・・・・・・お福は、北御所に引き取るかの」
「離縁さすってこと?」
藍の言葉に、たまは頷いた。
「お福は、旦那を好いているわけでは、ないのじゃろう? 大体、北御所に連なる斎王の家に、衆道者が関わること自体が気に入らぬ。汚らわしい」
シャッシャッと毛を逆立てるたまは、心底嫌そうに牙を剥く。
狐や化け猫は、女系だ。
故に、必要以上に衆道者を毛嫌いしてしまうのだろう。
そのわりに、たまのいるのは、相変わらず辰巳の膝の上なのだが。


