「そうだ! あんた、あそこの人、皆しょっ引いたって言ってたじゃない」
「・・・・・・よく知ってるなぁ。あのとき、お前はいなかったはずだが」
風弥が呆れたように、食ってかかる藍に呟いた。
藍は、ちっちっと指を振り、不敵に微笑む。
「よいっちゃんのあるとこ、藍もあり、よ。あなたとよいっちゃんの会話は、あたしも聞かせてもらった」
藍が二人の会話を聞いていたのは、たまたま今回与一の体調を考慮してのことだが、藍は気にせず言葉を続けた。
「お福さんは? お福さんも、しょっ引かれたの?」
下駄屋の裏で色を売るという罪状で、その‘色’が衆道に限られているのなら、お福は関係ないと思うのだが。
「ま、一応皆、だな。でも、あそこの衆道狂いは有名だから、女子は程なく解き放たれるだろうさ。ただ、お福はどうかな。曲がりなりにも、あそこの店の、頂点の女だぜ。管理不行き届きとか、悪くしたら、夫婦共謀の罪を問われるかもな。怪我はなかったようだが、辰巳に刃物を向けたのだし」
「六条の宮様の目論見の代償は、高くついたわね~」
頬に手を当て、ふうぅ、と息をつき、藍はどうしたもんかと頭を悩ませた。
すべての人間関係などもわかった今、六条の宮の言うとおり、辰巳からたまを取り返したところで、肝心のお福がいなければ、意味ないではないか。
それとも、何も知らないふりをして、しれっとたまだけを、六条の宮に届けるか。
元々の依頼は、六条の宮が、たまを取り返して欲しいとのことなので、そうしたところで、何ら不都合はない。
だが、おそらく六条の宮も、御珠が猫だとは知らないのだろうし、それを説明するためには、宮の前に姿を現さなければならない。
「・・・・・・よく知ってるなぁ。あのとき、お前はいなかったはずだが」
風弥が呆れたように、食ってかかる藍に呟いた。
藍は、ちっちっと指を振り、不敵に微笑む。
「よいっちゃんのあるとこ、藍もあり、よ。あなたとよいっちゃんの会話は、あたしも聞かせてもらった」
藍が二人の会話を聞いていたのは、たまたま今回与一の体調を考慮してのことだが、藍は気にせず言葉を続けた。
「お福さんは? お福さんも、しょっ引かれたの?」
下駄屋の裏で色を売るという罪状で、その‘色’が衆道に限られているのなら、お福は関係ないと思うのだが。
「ま、一応皆、だな。でも、あそこの衆道狂いは有名だから、女子は程なく解き放たれるだろうさ。ただ、お福はどうかな。曲がりなりにも、あそこの店の、頂点の女だぜ。管理不行き届きとか、悪くしたら、夫婦共謀の罪を問われるかもな。怪我はなかったようだが、辰巳に刃物を向けたのだし」
「六条の宮様の目論見の代償は、高くついたわね~」
頬に手を当て、ふうぅ、と息をつき、藍はどうしたもんかと頭を悩ませた。
すべての人間関係などもわかった今、六条の宮の言うとおり、辰巳からたまを取り返したところで、肝心のお福がいなければ、意味ないではないか。
それとも、何も知らないふりをして、しれっとたまだけを、六条の宮に届けるか。
元々の依頼は、六条の宮が、たまを取り返して欲しいとのことなので、そうしたところで、何ら不都合はない。
だが、おそらく六条の宮も、御珠が猫だとは知らないのだろうし、それを説明するためには、宮の前に姿を現さなければならない。


