「確かに、各地の怪しげなものを取り扱ってるような旦那だな。東の寺に行っては情報をもらって、それを元に船を出すって感じだぜ。どこどこにあるこれが、どこで売れそうか、とかな」

「なるほどね~。昔から人の暮らしに密着してれば、そういうことも、わかるわけね。遠い土地のことは、普通の人間にはわからないもの。そういう情報をいち早く掴めれば、貿易商としては、ぼろ儲けかもね。足もあることだし」

要するに、風弥の仕える旦那というのは、東の守護神を利用しているということか。
ただの人間にしては、随分大胆な奴だ。
呆れる藍に、風弥は一応弁明する。

「ま、旦那も情報と引き換えに、それなりの寄進はしてるぜ。持ちつ持たれつってやつだよ」

「風狸も、退屈しのぎにはなるじゃろうしの。したが、あまりに度が過ぎるようなら、そのうち天罰が下るぞ。あれでも風狸は、東の守護神じゃからな」

にやりと笑うように目を光らすたまに、風弥は、これまた軽く頷いた。

「ああ。今回のことで、本物の力ある人外が関わってるってことがわかったんだ。俺は、とばっちりを受けないうちに、とっとと去ることにするさ。面倒事は、御免だぜ」

「任務は? 放棄するの?」

藍が、少し警戒しながら言う。
この男と一戦交えるのは、できれば避けたい。
正面からやり合えば、かなり手こずりそうな相手である。

風弥がたまに手を出したら、有無を言わさずSAAでぶち抜いてやろうかしら、と思っていると、風弥はちらりとたまを見て、息をついた。