「東はあの通り、元から寺だからな。斎宮は必要ない。でも役割としては、北とほぼ同じはずだぜ。ただ力がだんちで弱いから、ま、あの通り、廃れてるけど」
「お主は、人の子にしては、よう知っておるの」
それまで普通の猫のように、辰巳にじゃれていたたまが、再び人語で喋った。
辰巳がまた、びくっとする。
「これ、そのように恐れるでない。お前さんは、わらわの守り役じゃ。わらわの宮の下男より、下駄屋の話が出た折りに、北御所様自らお前さんを見出したのじゃ」
「・・・・・・あのー、北御所様って? 皇族のお人じゃないの?」
口を挟んだ藍を、たまは目を細めて、じっと見た。
やがて、風弥に変わって、たまが話を引き継いだ。
「今は、どうやら北御所様に仕える斎王のことを、北御所様と呼んでいるようじゃな。まぁ・・・・・・北御所様は、それこそそう簡単にお姿は現さぬ故、人間どもがそう思っても、致し方ないが。事実は、北御所様に仕える斎王が皇族筋の女子。これは古来より変わらぬことじゃ。北御所様は、京処の北方を守護する、妖狐よ。わらわはまだ化け猫なれど、次期北御所として、修行中の身。それをいいことに、東の風狸(ふうり)が、わらわを害さんと攻撃を仕掛けてきたのじゃ」
「京処を守護するのが、狐だなんて。初めて知ったわ」
「北の守護神が狐で、東の守護神が狸ってのは、伝説では語られているがな」
元々宮処は、いろいろな術を施して造られた、魔界都市だ。
その強すぎる気は、少しの均衡の崩れで、いろいろな歪みが生まれる。
妖怪や物の怪の多いのも、そのためだ。
「お主は、人の子にしては、よう知っておるの」
それまで普通の猫のように、辰巳にじゃれていたたまが、再び人語で喋った。
辰巳がまた、びくっとする。
「これ、そのように恐れるでない。お前さんは、わらわの守り役じゃ。わらわの宮の下男より、下駄屋の話が出た折りに、北御所様自らお前さんを見出したのじゃ」
「・・・・・・あのー、北御所様って? 皇族のお人じゃないの?」
口を挟んだ藍を、たまは目を細めて、じっと見た。
やがて、風弥に変わって、たまが話を引き継いだ。
「今は、どうやら北御所様に仕える斎王のことを、北御所様と呼んでいるようじゃな。まぁ・・・・・・北御所様は、それこそそう簡単にお姿は現さぬ故、人間どもがそう思っても、致し方ないが。事実は、北御所様に仕える斎王が皇族筋の女子。これは古来より変わらぬことじゃ。北御所様は、京処の北方を守護する、妖狐よ。わらわはまだ化け猫なれど、次期北御所として、修行中の身。それをいいことに、東の風狸(ふうり)が、わらわを害さんと攻撃を仕掛けてきたのじゃ」
「京処を守護するのが、狐だなんて。初めて知ったわ」
「北の守護神が狐で、東の守護神が狸ってのは、伝説では語られているがな」
元々宮処は、いろいろな術を施して造られた、魔界都市だ。
その強すぎる気は、少しの均衡の崩れで、いろいろな歪みが生まれる。
妖怪や物の怪の多いのも、そのためだ。


