「何だ・・・・・・? また寺からの追っ手か?」
辺りの惨状を眺めて呟く辰巳の目が、与一で止まった。
その目が、驚きに見開かれる。
「兄さん! 凄い怪我じゃないか!」
慌てて立ち上がった拍子に、辰巳の膝の上にいた黒猫が転げ落ち、不満げににゃあ、と鳴いた。
「あ、すまん。ほら、たま」
言いながら黒猫を抱き上げ、辰巳は縁側から飛び降りて、与一のほうへ駆け寄った。
「おいこら。勝手な真似は・・・・・・」
口を開いた風弥の言葉を制し、与一は己の前に屈み込む辰巳の、抱えている黒猫を凝視した。
よく手入れの行き届いた毛並みに、高級な羽二重の布を首に巻いている。
そしてその布には、小さな金の鈴がついており、黒猫が動くたびに、涼やかな音を立てる。
毛並みといい、身につけているものといい、一介の職人の飼い猫とは、とても思えない。
「辰巳さん。その猫、あんたの猫か?」
傷の具合を見ようとしていた辰巳に、与一は全然関係ないことを聞いた。
辰巳が、怪訝な顔をする。
辺りの惨状を眺めて呟く辰巳の目が、与一で止まった。
その目が、驚きに見開かれる。
「兄さん! 凄い怪我じゃないか!」
慌てて立ち上がった拍子に、辰巳の膝の上にいた黒猫が転げ落ち、不満げににゃあ、と鳴いた。
「あ、すまん。ほら、たま」
言いながら黒猫を抱き上げ、辰巳は縁側から飛び降りて、与一のほうへ駆け寄った。
「おいこら。勝手な真似は・・・・・・」
口を開いた風弥の言葉を制し、与一は己の前に屈み込む辰巳の、抱えている黒猫を凝視した。
よく手入れの行き届いた毛並みに、高級な羽二重の布を首に巻いている。
そしてその布には、小さな金の鈴がついており、黒猫が動くたびに、涼やかな音を立てる。
毛並みといい、身につけているものといい、一介の職人の飼い猫とは、とても思えない。
「辰巳さん。その猫、あんたの猫か?」
傷の具合を見ようとしていた辰巳に、与一は全然関係ないことを聞いた。
辰巳が、怪訝な顔をする。


