「当然だ。敵に負けた上に、唯一の取り柄である顔まで壊されるとは。俺はな、できもしない大口を叩く奴が、大嫌いなんだよ」

「お、おはひあ・・・・・・」

いつの間に気がついたのか、竜胆丸が、打たれたように目を見開いて、風弥を見ている。

「ま、お前のお陰で、新たな花を二つも手に入れられそうだ。それに免じて、命だけは助けてやってもいいが?」

「二つの花ってのは、あたしとよいっちゃん?」

再び風弥に抱き寄せられた藍が、いつものように小首を傾げる。
風弥はその藍の仕草に、満足げに口角を上げる。
その様子を、じっと見ていた竜胆丸の目から、涙がこぼれた。

「残念ながら! あたしとよいっちゃんは、一つの花なの。どっちが欠けても、駄目なのよ!」

言うなり藍は、一度交差した両腕を、飛び退きざま、ぱっと開いた。

「・・・・・・うわっ」

風弥が叫び、後ずさる。
風弥の着物の胸の辺りが、切り裂いたように、はらりと開いた。

「ここであんたの相手をよいっちゃんがして、万が一死んじゃったら、花は枯れちゃうのよ」

言いながら藍は、獣のような速さで、風弥の身体に傷をつけていく。

「くっ・・・・・・!」

先程までの余裕は吹っ飛び、風弥は手を顔の前で交差して前屈みになり、藍の攻撃を防ぐ。
あまりの速さに、どういう攻撃かもわからない。

実は何のことはない、ただの拳なのだが、見かけの小さな身体から繰り出されているとは思えないほど、肉を抉るように鋭いのだ。