「何故お前が、そんなことを知って・・・・・・」

呟いた風弥が、藍を凝視して、はっとしたように言葉を切った。

「ま、まさか・・・・・・。お前があのときの、可憐な少年か」

こんな状況でも‘可憐’という形容詞を忘れないとは。
藍の化けた‘らんまる’は、相当強い印象を残しているようだ。

「ご名答~。ごめんなさいねぇ。らんまるは、あなたの好きなオトコノコじゃなかったのぅ」

にっこりと笑い、優雅にお辞儀する藍を、風弥は呆気に取られたように見た。

だがすぐに立ち上がると、目にも留まらぬ速さで距離を詰め、藍を抱きしめた。

「らんまるっ! 会いたかった!!」

「!?」

あまりに意外な行動に、藍は叫ぶことも反撃することも忘れて固まる。
藍が女だということがわかったはずなのに、風弥は構わず、藍をぐいぐいと抱きしめる。

「ちょ、ちょっとっ! あたしは、らんまるでもなく、まして陰間でもないの! その前に、男じゃないんだから!」

喚く藍に、風弥は少しだけ身体を離すと、首を傾げるようにして、藍を間近から覗き込んだ。