風弥の手と与一の帯の僅かな間を、黒いものが切り裂いたのだ。
与一の身体の横を見れば、縁側に突き刺さった、黒い羽根が目に入る。
「悪いけど、あたしのよいっちゃんに、おかしなことしないでくれる?」
よく通る少女独特の高い声に、風弥は振り返った。
いつの間に入ってきたのか、庭の大木の下に、小柄な少女が佇んでいる。
風弥よりも、頭一つ以上小さい身体に、いかにも娘らしい、桜色の振り袖。
長い髪は頭頂部で、紅梅の縮緬と桜色の組紐でまとめてある。
「お前・・・・・・。お前が、殺し屋・藍か」
呟いた風弥の瞳が、剣呑な光を宿す。
「小娘じゃん! どんな巨漢かと思ってたのに」
あからさまに敵意むき出しで吠える竜胆丸を一瞥し、再び風弥に視線を戻した藍は、その足元に寝かされた与一を、ちらりと見た。
「ただの色子に、小娘呼ばわりされる覚えはないわ。ちょっと自分より綺麗だからって、嫉妬するなんて醜いわねぇ。ま、あんたは随分自分に自信があるみたいだから、仕方ないか」
竜胆丸は、確かに綺麗な少年だ。
おそらく風弥の、組織内での情夫だろう。
綺麗なだけでなく、腕も相当立つだろう。
風弥の一番のお気に入りという立場であることが、容易に想像できる。
与一の身体の横を見れば、縁側に突き刺さった、黒い羽根が目に入る。
「悪いけど、あたしのよいっちゃんに、おかしなことしないでくれる?」
よく通る少女独特の高い声に、風弥は振り返った。
いつの間に入ってきたのか、庭の大木の下に、小柄な少女が佇んでいる。
風弥よりも、頭一つ以上小さい身体に、いかにも娘らしい、桜色の振り袖。
長い髪は頭頂部で、紅梅の縮緬と桜色の組紐でまとめてある。
「お前・・・・・・。お前が、殺し屋・藍か」
呟いた風弥の瞳が、剣呑な光を宿す。
「小娘じゃん! どんな巨漢かと思ってたのに」
あからさまに敵意むき出しで吠える竜胆丸を一瞥し、再び風弥に視線を戻した藍は、その足元に寝かされた与一を、ちらりと見た。
「ただの色子に、小娘呼ばわりされる覚えはないわ。ちょっと自分より綺麗だからって、嫉妬するなんて醜いわねぇ。ま、あんたは随分自分に自信があるみたいだから、仕方ないか」
竜胆丸は、確かに綺麗な少年だ。
おそらく風弥の、組織内での情夫だろう。
綺麗なだけでなく、腕も相当立つだろう。
風弥の一番のお気に入りという立場であることが、容易に想像できる。


