「ふふふ・・・・・・。ほんに、見目良い男が苦しむさまは、何とも言えぬ」

風弥の手が、肩に回るのを感じたが、与一は振り払うこともできずに、その場に倒れ込んだ。

「ふん。殺し屋のくせに、大したことはないのぅ。この分じゃ、藍とかいう女も、たかが知れるというもの」

地に倒れ伏した与一を、ごろりと仰向け、風弥は上から与一を眺め回した。

「う~む、しかし・・・・・・。これはまた、稀に見る良い男だの」

「頭(かしら)。いくら何でも、僕の前でそういうことは、控えてください」

与一の身体を眺めていた風弥の目が、暗い屋敷の中に立つ少年を捕らえる。

「竜胆丸(りんどうまる)か。目当てのものは、あったのか?」

竜胆丸と呼ばれた少年は、音無く与一に近づくと、憎々しげに呟いた。

「・・・・・・僕のほうが、綺麗ですよ」

「答えになってないな」

風弥はつい、と手を伸ばし、目の前に近づいた竜胆丸の白い頬を撫でた。
その途端、いきなり竜胆丸が、怯えたように飛び退る。

「・・・・・・御珠はまだ、見つけられません」

小さく震えながら言う竜胆丸の、風弥の触れた頬は、彼が軽く触れただけなのに、火傷のような痕がついている。

「これだけ探しても、見つからないとは。お前も無駄口叩いてないで、さっさと目的のものを持ってくるんだな」

冷たく言い放ち、風弥は与一を抱え上げ、縁側の辰巳の横に寝かせた。

「ふふ。御珠なんぞよりも、こっちのほうが、俺にとっては宝だぜ」

満足そうに与一を眺め、風弥は与一の帯に手を伸ばす。
だが、風弥の手は帯に触れることなく、弾かれたように引っ込められた。