「北御所様とは、多分面識無いと思うんだよ。少なくとも、親しい間柄ではないよ。お福さんの家は、北御所様の宮に仕える、斎王の家とか? 北御所様のところの使用人が、下駄屋の客として出入りしてたのさ。北御所様のところの、それなりの身分のかたの下駄も作ってるって、あそこの旦那は、よく自慢してたもの。下駄屋の旦那が嫁を探してるって聞いて、知り合いに没落宮家のお姫様がいるって話でも、持ち上がったんじゃないか? そういや下駄屋の旦那が婿候補に挙がってからは、北御所様側のほうが、乗り気になったみたいだ。お福さんは次の斎王だそうだが、北御所様のお声掛かりで、下駄屋に来たとか。一応仕えるべき主(あるじ)のためってことだが、ま、多分生活のためだろ。あそこの下駄屋は、ぐんと大きくなったのは最近だが、歴史もあるし、財もある。てことで、お福さんを降嫁させたんだろうよ」
「・・・・・・しっかし、詳しいなぁ」
昔ながらの地元民の情報量に舌を巻きつつ、与一は呟いた。
確かに茶屋は、情報の入りやすい場所ではある。
いろいろな人間が出入りし、茶を飲みながら、世間話に花を咲かす。
古くからある茶屋ならなおさら、近所の店との付き合いも濃いだろうし、客も女将も一緒になって話をする。
この女将の、話好きな性格もあろうが。
「あそこの旦那とは、幼なじみみたいなもんだよ。歳は離れてるが、よく一緒に遊んだものだ。ま、この辺りの店は、みんなそうなんだがね。お福さんぐらいだよ、溶け込まないのは」
「・・・・・・しっかし、詳しいなぁ」
昔ながらの地元民の情報量に舌を巻きつつ、与一は呟いた。
確かに茶屋は、情報の入りやすい場所ではある。
いろいろな人間が出入りし、茶を飲みながら、世間話に花を咲かす。
古くからある茶屋ならなおさら、近所の店との付き合いも濃いだろうし、客も女将も一緒になって話をする。
この女将の、話好きな性格もあろうが。
「あそこの旦那とは、幼なじみみたいなもんだよ。歳は離れてるが、よく一緒に遊んだものだ。ま、この辺りの店は、みんなそうなんだがね。お福さんぐらいだよ、溶け込まないのは」


