千秋屋を出、そのまま西の市のほうへ歩きながら、藍はちらりと与一を見た。

「ねぇよいっちゃん。この格好、あたしだって、わからない?」

懐手をして歩いていた与一は、少し前を歩く藍を見た。
すれ違う人間が、まず間違いなく藍に釘付けになっていく。

「どうでしょうねぇ。お子様度合いは、化粧でマシになっているかもしれませんが、着物はいつもよりお子様ですし」

与一の言い方に多少気分を害したように、藍は少し頬を膨らませた。

「まぁ少なくとも、こんな綺麗なお人形が‘殺し屋・藍’とは思わないでしょうね」

ひそ、と声を潜めた与一に、藍はにこ、と笑って、ててて、と与一の横に並んだ。

「じゃ、笠被らないでも、大丈夫かしらね」

笠は千秋屋に置いてきてしまった。
だが今の藍は、いつもの藍とは全然違う。

顔が変わるぐらいの化粧をしているわけではないが、着るもの一つでこうも印象が変わるものかと、与一は藍をしげしげと見た。
顔までが違って見えるのは、着物が華やかなせいでもあろう。
明るい色の華やかな着物は、藍の美貌を十二分に引き出している。