藍の読み通り、川沿いの屋台で蕎麦を啜っていた与一は、ばさ、という羽音に顔を上げた。
見慣れた黒い鴉が、こちらに飛んでくる。
「ご馳走さん」
椀を置き、与一は屋台を離れ、つい、と手を宙に掲げた。
まだ市の店も開いていない時刻なので、あまり周りに人もいない。
路地に入ることもせず、その場でから公は、与一の手に留まった。
「から公、どうした?」
小さく囁き、から公が咥えていた風呂敷を受け取る。
「藍さんは、千秋屋か。しばらく千秋屋に留まるってことかい?」
顎を撫でてやりながら言う与一に、くぁ、と鳴き、から公は羽をばさばさと動かす。
そのままくぁ、くぁ、と鳴きながら、がしがしと与一の腕を上って肩に乗り、またくぁ、と鳴く。
「何だ? ・・・・・・俺は藍さんじゃねぇから、お前の言葉はわからねぇよ」
果たして本当に藍がから公の言葉を理解しているのかは定かでないが、まるで会話しているように、藍はから公を扱う。
やっぱり、妙な女だよなぁ、と思いながら、肩のから公を宥めていると、前方より見覚えのある町人が、お使い坊主のような少年を連れて、こちらにやってくるのが目に入った。
町人は与一を認めると、肩の上のから公に目をやり、またじっと与一を見て、顔に笑みを浮かべた。
見慣れた黒い鴉が、こちらに飛んでくる。
「ご馳走さん」
椀を置き、与一は屋台を離れ、つい、と手を宙に掲げた。
まだ市の店も開いていない時刻なので、あまり周りに人もいない。
路地に入ることもせず、その場でから公は、与一の手に留まった。
「から公、どうした?」
小さく囁き、から公が咥えていた風呂敷を受け取る。
「藍さんは、千秋屋か。しばらく千秋屋に留まるってことかい?」
顎を撫でてやりながら言う与一に、くぁ、と鳴き、から公は羽をばさばさと動かす。
そのままくぁ、くぁ、と鳴きながら、がしがしと与一の腕を上って肩に乗り、またくぁ、と鳴く。
「何だ? ・・・・・・俺は藍さんじゃねぇから、お前の言葉はわからねぇよ」
果たして本当に藍がから公の言葉を理解しているのかは定かでないが、まるで会話しているように、藍はから公を扱う。
やっぱり、妙な女だよなぁ、と思いながら、肩のから公を宥めていると、前方より見覚えのある町人が、お使い坊主のような少年を連れて、こちらにやってくるのが目に入った。
町人は与一を認めると、肩の上のから公に目をやり、またじっと与一を見て、顔に笑みを浮かべた。


