そこへ、三郎太が飛んできた。

「何だ? どうした? 朔太郎、お前、何やったんだっ」

「彩さん? どうなさったの?」

お蓉までが、三郎太に続いて、部屋に飛び込んでくる。
藍はお蓉に飛びついて、ぎゃんぎゃん泣き喚いた。

「朔太郎っ。あなた、まさか彩さんに、無体なことでもしたんじゃないでしょうね」

キッと朔太郎を睨み付け、お蓉が藍を抱き寄せる。
朔太郎は、お蓉と三郎太二人に睨まれ、ええ? と泣きそうな顔になる。

「ち、違うの。うう、ひっく。さくたろさんは、にゃあ、親切でしてくれたんだろう、ひく、けど、あ、あたしは、うにゃあ、どーぉしても、ふにゃ、よい・・・・・・ちゃ、の、ひっく、よいっちゃ、で、ないと・・・・・・」

しゃくり上げているのと、そのしゃくり上げが妙なのとで、何のこっちゃかわからないが、今朝方土手で、いきなり藍を抱き上げた朔太郎を見ていたお蓉は、何となく事情を察した。

「わかったわ。朔太郎、ご苦労様。さがっていいわ」

「あ・・・・・・、はい」

しょぼんと項垂れつつ、朔太郎が出て行こうとする背中に、藍がなおもしゃくり上げながら、声をかけた。

「さくたろさ・・・・・・。ご、ごめんね」