あたしこんなに食べられない~と思いながらも、折角の厚意なので、せっせと箸を動かす。
が、普段ほとんど食べないので、すぐにお腹は、いっぱいになってしまう。

「あら、彩さん。お料理、口に合わなかったかしら」

横のお蓉が、箸の止まった藍の膳を見て言う。
無理もない。
藍にしては頑張って食べたほうだが、膳の上の朝餉は、ほとんど減っていない。

「い、いえ。とっても美味しいのですけど・・・・・・。ご、ごめんなさい。何だか、気分が悪くて・・・・・・」

辛そうに袖で顔を覆い、小さく震える藍に、今度は主人が反応した。

「おお、気づかなんだ。追いはぎに襲われたんじゃ、悠長に飯など、喉を通るはずもない。まして幼い身でだ。ささ、お気になさらず、さがって休まれるがよい」

「申し訳ありません。では、お言葉に甘えさせていただきます」

ぺこりと頭を下げ、お蓉に、お部屋にいるわね、と耳打ちすると、藍は三郎太と共に部屋を出た。