「まあぁっ。何て･･････何て不憫なおかたなんでしょう！　あなたのようにお可愛らしいかたが、そのように苦労しているなんて･･････。落ち着くまで、気兼ねなくこちらにいらっしゃい」

奥方が、袖で目を押さえながら、身を乗り出す。

---あら･･････。しくじったかしら。どんなに不幸な身の上でも、こんな得体の知れないあたしなんて、とっとと出されると思ったのに---

これでは、下手したらしばらくここに留まらなければならないかもしれない。

---そんなに長い間、よいっちゃんに会えないのは辛いわ！---

いざとなったら、与一に迎えに来てもらおうと思いつつ、とりあえず、ありがとうございます、と礼を述べ、藍はお蓉に促されて席に着いた。

奥方に向かい合うように前に座ると、三郎太が朝餉の膳を差し出した。
さすが大店の朝餉。
白い飯に焼き魚や和え物など、普段はあまり口にできないものが、ふんだんに盛ってある。

---焼き魚かぁ。市の飯屋にあるのも、大抵は干物だものね。生魚なんて、まず売ってないから買えないし。ああっよいっちゃんに、食べさせてあげたいなぁ---