母屋の広い座敷では、正面の上座に千秋屋の主人らしき身なりの良い男が、次いでその左手に、奥方であろう女性が座っていた。
藍は手をついて頭を下げ、挨拶する。
「彩と申します。この度は、追いはぎに襲われ途方に暮れていましたところをお助けいただき、まことにありがとうございます」
「ああ、そんな堅苦しい挨拶はよろしい。困ったときは、お互い様だ。さ、お顔を上げなされ」
うーむ、と藍は考えたが、最早逃げる術はない。
仕方なく、おずおずと顔を上げる。
お蓉や三郎太と同じく、旦那と奥方も、藍を見て息を呑んだ。
「おお・・・・・・。なんとまぁ、美しいおかただ。追いはぎに襲われたとのこと、難儀でありましたな。しかし、そなたが無事で何より」
「ほんに。恐ろしい目に遭われましたね。親御様も、心配しておられるでしょう。ご連絡だけでも、先に使いをやりましょう」
「あ、いえ」
奥方が腰を浮かそうとするのを慌てて止め、藍は少し愁いを帯びた表情になり、頭を下げた。
「あの、わたくしには、親はおりませぬ。ただ一人の知り合いを頼って京処にきましたものの、そのかたの元に辿り着く前に、このような目に・・・・・・」
うるうると潤んだ目で訴えられ、お蓉の両親は元より、お蓉と三郎太までが、つられて涙を浮かべる。
藍は手をついて頭を下げ、挨拶する。
「彩と申します。この度は、追いはぎに襲われ途方に暮れていましたところをお助けいただき、まことにありがとうございます」
「ああ、そんな堅苦しい挨拶はよろしい。困ったときは、お互い様だ。さ、お顔を上げなされ」
うーむ、と藍は考えたが、最早逃げる術はない。
仕方なく、おずおずと顔を上げる。
お蓉や三郎太と同じく、旦那と奥方も、藍を見て息を呑んだ。
「おお・・・・・・。なんとまぁ、美しいおかただ。追いはぎに襲われたとのこと、難儀でありましたな。しかし、そなたが無事で何より」
「ほんに。恐ろしい目に遭われましたね。親御様も、心配しておられるでしょう。ご連絡だけでも、先に使いをやりましょう」
「あ、いえ」
奥方が腰を浮かそうとするのを慌てて止め、藍は少し愁いを帯びた表情になり、頭を下げた。
「あの、わたくしには、親はおりませぬ。ただ一人の知り合いを頼って京処にきましたものの、そのかたの元に辿り着く前に、このような目に・・・・・・」
うるうると潤んだ目で訴えられ、お蓉の両親は元より、お蓉と三郎太までが、つられて涙を浮かべる。


