「あたしがよいっちゃんにご飯を作るのは、昔からそうだから、当たり前のことなのよ」
呟いた藍に、今度はお蓉が首を傾げた。
「昔?」
やばっと思っていると、折良く襖の向こうで声がした。
「お嬢さん。朝餉の用意ができました」
「あ、ご飯だって」
話を逸らそうと、慌てて藍は襖を指差す。
その声に、襖が少し開き、三郎太が二人を促した。
「彩ちゃんも、ぜひ一緒にと、旦那様が」
「そうね、こっちよ。あ、でもちょっと待って」
立ち上がり、お蓉は傍に置いてあった縮緬の布で、軽く藍の髪を括った。
「全部下ろしてちゃ、ご飯食べにくいでしょ」
「あ、あの。あたしも、ご家族と・・・・・・?」
ここまで入り込んでしまったら、主人に挨拶しなければならないだろうとは思っていたが、家族と食事とは。
しかし、断るのも不自然だ。
---うう。お稲荷さんは、ないだろうなぁ。ああ、こういう、きっと豪華な食事は、よいっちゃんに食べさせてあげたいわぁ。これがまだ下駄屋なら、いろんな部屋に入れるのは有り難いけど、千秋屋じゃあね~。屋敷自体に得るものはないし、とっととお暇したいのに---
お蓉に引き摺られつつ、藍は心の中で、ぶつぶつと文句を垂れた。
呟いた藍に、今度はお蓉が首を傾げた。
「昔?」
やばっと思っていると、折良く襖の向こうで声がした。
「お嬢さん。朝餉の用意ができました」
「あ、ご飯だって」
話を逸らそうと、慌てて藍は襖を指差す。
その声に、襖が少し開き、三郎太が二人を促した。
「彩ちゃんも、ぜひ一緒にと、旦那様が」
「そうね、こっちよ。あ、でもちょっと待って」
立ち上がり、お蓉は傍に置いてあった縮緬の布で、軽く藍の髪を括った。
「全部下ろしてちゃ、ご飯食べにくいでしょ」
「あ、あの。あたしも、ご家族と・・・・・・?」
ここまで入り込んでしまったら、主人に挨拶しなければならないだろうとは思っていたが、家族と食事とは。
しかし、断るのも不自然だ。
---うう。お稲荷さんは、ないだろうなぁ。ああ、こういう、きっと豪華な食事は、よいっちゃんに食べさせてあげたいわぁ。これがまだ下駄屋なら、いろんな部屋に入れるのは有り難いけど、千秋屋じゃあね~。屋敷自体に得るものはないし、とっととお暇したいのに---
お蓉に引き摺られつつ、藍は心の中で、ぶつぶつと文句を垂れた。


