「三郎太さんが作ってるの?」

「まさか。それ用の使用人がおりますよ。わたくしたち家族のご飯は、いつも菊助が運んでくれるの」

運ぶだけでも、特に主人の家族のものを任されるというのは、名誉なことなのだろう。

「よくわかんないけど、それだけ三郎太さんは、ご主人にも気に入られてるってことよね」

藍の言葉に、お蓉は満足げに、ふふ、と笑った。

「あなたは? 与一さんが運んでくれるの?」

お蓉は他の家でも、ご飯は使用人が作り、運んでくれるものだと思っているようだ。
ま、そういう暮らしが当たり前なのだし、他を知らないんだろうから、仕方ないけどね~、と思いつつ、藍はふるふると首を振った。

「そんなの、お金持ちのお家だけよ。あたしは自分で作って、よいっちゃんに運んであげるの」

えっ、とお蓉が、驚いたように小さく声を上げる。

「まぁ。あなた、そんなに小さいのに、ご飯を作れるの?」

珍しく、藍の目が胡乱になった。
与一も言っていたが、本当に一体、自分はいくつに見えるのだろう。