藍はきょとんと、三郎太を見上げた。

「別によいっちゃんは、寝る前も帯を解くだけで、着物までは脱がしてくれないわよ?」

「でも、一緒に寝てるんだろ?」

「うん。まぁ、あたしが勝手によいっちゃんのお布団に潜り込むんだけど」

「へえぇ~。与一も果報者だなぁ。彩ちゃんみたいな子が、そこまでするなんて」

心底感心したように、三郎太が言う。
が、藍は不満そうに唇を突き出した。

「でも、いっつもよいっちゃんに怒られるの。自分の布団で寝ろって」

「かーーっ! 馬鹿だなぁ、与一は。それがどれだけ有り難いことか、まるでわかっちゃいねぇ」

「そうよね。くっついて寝たほうが、あったかいし、安心するじゃない」

三郎太の思考と藍の思考は、まるでかみ合っていない。
だがそれは、藍の幼さ故だと、三郎太は思っている。

「彩ちゃんと与一は、本当にいい仲なんだなぁ。あいつ、優しいかい?」

三郎太が、不意にしみじみと言った。
藍は少し首を傾げ、そうねぇ、と、ちょっと考えた。

「優しいわ。何だかんだ言っても、あたしの言うこと聞いてくれるし」

でもそれは、当たり前なんだけどね、と心の中で呟きながら、藍は口角を上げた。