「じゃ、浴衣はこれ使ってくれていいから。ちょっと大きいかもしれないけど」

「あ、ちょ、ちょっと待って」

三郎太が籐の籠に浴衣を入れて出て行こうとするのを、藍の困ったような声が止めた。

「どうかした?」

振り向いた三郎太に、藍はくるりと後ろを向いて、帯を示した。

「悪いんだけど、帯、外してくれない?」

「えっ」

三郎太が、狼狽える。

「よいっちゃんに締めてもらったから、きつく締まってて。あたしの力で解くのは、ちょっと難儀なの」

「よ、与一が?」

三郎太は、帯に手をかけたものの、どこをどうすればいいのかわからない。

「彩ちゃんは、いつも与一に着物、着せてもらってるのか?」

「うん。だって、一緒に寝てるし」

げほっと三郎太がむせる。

「ま、まぁ、脱がしたんなら、着せてあげなきゃな」

ごほごほと、妙に咳払いを繰り返しながら、三郎太がやっと見つけた帯の結び目を解きにかかる。