ぐいぐいと押しまくるお蓉に、三郎太は観念したように、目をぎゅっと瞑って叫んだ。

「お、お嬢さんのことを、お慕いしているのですっ!」

束の間の沈黙。
三郎太が、そぉっと目を開くと、正面のお蓉の潤んだ瞳とぶつかる。

「菊助・・・・・・。嬉しいわ」

「はぁーーーい、はいはい。ごめんなさいね。今のうちに、お邪魔虫はお風呂を頂いちゃって、いいかしら?」

今まさに恋絵巻の終盤というところで、藍がぶち壊すように口を挟んだ。

「あ、ああ。そうだったな。こっちだよ」

ぎくしゃくと立ち上がり、三郎太が藍を促す。
右手と右足が同時に出るほどのぎこちなさだ。

「菊助。彩さんを案内したら、またここへ戻ってきて」

背中にかけられたお蓉の声に、三郎太が足をもつれさせながらも、軽く頷いた。

---やれやれ。何かこういうのって、途中までは面白いんだけど、最後には、すっと冷めちゃうのよね---

色恋沙汰に興味がないのは、藍も与一と一緒だ。
よいっちゃんのこと言えないわねぇ、と思いながら、藍は三郎太の後について行った。