「そういうわけだから、何事にも深入りしないことね。色恋なんて、以ての外よぅ。欲求不満なんだったら、色町で発散しなさい」

藍の声に、我に返った与一は、立ち上がって着物に着替え、エンフィールドを無造作に懐に突っ込んだ。
その間に、藍は階下に下りていって、朝餉に取りかかる。

二人の住処は、京処にありがちな、入り口から奥へ長い造りで、一階が炊事場になっている。

しばらくして、藍が膳を運んできた。

「はいっ。今日のお漬け物は、昨日のから公のお土産よぅ」

言いながら、いそいそと茶を入れる。
与一は膳の前に座り、手を合わす。