一方、与一らと別れた藍は、お蓉を連れて、とことこと通りを歩いていた。

「あ、あの。一体どうするおつもりなのです?」

鼻歌を歌いながら少し前を歩く藍に、お蓉がたまりかねたように言う。
そこで初めて、藍はまだお蓉に何も話していないことに気づいた。

「ああ。えっとね・・・・・・」

藍はきょろきょろと辺りを見渡すと、いきなり通りの横の草むらに飛び込んだ。
そのまま、ごろごろと転がる。

「ふぅ」

呆気に取られているお蓉を気にもせず、草の中から顔を出した藍は、すっかり砂と草にまみれている。
さらに汚れた手で頬をこすり、顔も汚す。

「ちょ、ちょっと。何やってるんです」

慌てたお蓉が駆け寄り、己の汚れを払うのを見ながら、藍は口を開いた。

「う~ん、これで自然に汚れた感じかしら」

何の事やらわからず、怪訝な顔をするお蓉に、藍は自分の髪を引っ張って、少し乱しながら笑った。