「俺は、そんなに感情のない人間かね」

不感症だとも言われたなぁ、と与一は懐手をして、ぼんやり言った。
そんな与一の肩をぽんと叩き、三郎太は明るく笑う。

「けど、あんな子がいるなら一安心だ。ちょっと若いみたいだが、かなり可愛いと見た」

最後のほうは、藍は素顔を曝していたが、部屋が暗かったせいで、はっきりとは見えなかったらしい。

「お前も結構、べた惚れっぽかったじゃねぇか。早く帰ってきてね、なんて、可愛いこと言うねぇ」

ぐりぐりと肘で小突いてくる三郎太を避けながら、与一は乾いた笑いを返す。

「一緒に住んでるってことかい。おお? もしかして、すでに祝言挙げてるんじゃねぇだろうな?」

あまりに馴染みのない単語に、一瞬意味がわからなかった。
一拍置いてから、与一は吹き出す。

「まさか。可愛い奴ではあるが、そんなことは、まだまだ・・・・・・」

「今はそうでも、あの様子じゃ彩ちゃんもお前にべた惚れのようだし、結納ぐらい、交わしておいてもいいと思うぜ」

「何言ってやがる。三郎太こそ、お嬢さんの気持ちがはっきりわかった今、とっとと主人にてめぇの気持ちを伝えて、祝言を挙げればいいじゃねぇか。お前らのほうが、今すぐ祝言、挙げられるぜ」

お蓉の告白を思い出し、三郎太は赤くなった。